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熱核融合炉…誘致失敗の日本名を捨て実取れた?とは

 ◆六ヶ所村に遠隔実験センター 仏本部には常勤研究者40人…

 国際熱核融合実験炉ITER)の建設地が、欧州連合EU)の推したフランス・カダラッシュに決まった。誘致合戦でEUに花を持たせた日本は、見返りとして、ITER運営組織のトップを日本人から出し、複数の関連研究施設を国内に建設する権利を得た。核融合研究は、今後、どのように進むのか。(佐藤俊彰、山田哲朗)

 ITERは、重水素と三重水素トリチウム)の核融合でエネルギーを取り出し、将来、核融合炉が発電に利用できるかどうかを見極める実験施設だ。日本、EU、米国、ロシア、韓国、中国が共同で2015年までに施設を完成させ、20年間研究する。総事業費は1兆3000億円に上る。

 ITERでは、3種類の巨大な超伝導磁石で従来より強力な磁場を作り出し、高温・高密度のプラズマによる核融合を400秒以上継続させる。目標の一つは、外部から加えたエネルギーに対し、何倍のエネルギーが得られたかを示す「増倍率」が、10倍を超える核融合を実現することだ。

 これまでに日米欧の実験装置が達成したのは1倍程度に過ぎない。実用化の目安は増倍率30倍以上と言われ、道のりは遠い。

 核分裂エネルギーを利用する原子炉に比べ、炉内構造が複雑なので、機器や素材の工学的検証も大きな目的だ。特に注目されるのはダイバータという機器の耐久性。核融合で発生した高エネルギーのヘリウムを取り除くため、炉内で一番の高熱にさらされる。こうした機器類は強力な中性子も浴びるため、定期交換ではロボットによる高精度の完全遠隔作業が求められる。

 日本に建設される可能性がある施設の本命は遠隔実験研究センターだ。遠隔操作で、現地カダラッシュにいるのと同じように実験やデータ収集ができ、プラズマの模擬実験などで日本が研究をリードすることも可能だ。建設場所は、誘致活動に協力してきた青森県六ヶ所村が確実視される。

 日本はこうした関連施設を建設費920億円以内で複数選ぶことが認められ、しかもその半額460億円はEUが拠出する取り決めだ。運営母体のITER機構の常勤研究者も、200人のうち40人が日本枠となった。文部科学省は「見返りは大きい。多くの研究者がITERのノウハウを吸収できる」と自賛する。

 だが、研究者たちの受け止め方は一様ではない。誘致失敗で研究停滞の恐れもささやかれるからだ。

 日本原子力研究所の奥村義和ITER業務推進室長は「自分たちで実験炉を作って動かしてこそ工学的なデータは蓄積できる。設計や部品の規格作りでEUに主導権を握られるのでは」と懸念する。

 電力中央研究所の岡野邦彦上席研究員は「日本の核融合研究は、ITER本体が来るという前提で組み立てられてきた。再出発に向け、戦略の練り直しが必要だろう」と指摘している。

 ◆国際研究の先進地仏カダラッシュ

 「カダラッシュに建設するという各国の決断が正しかったと証明できるよう、全力を尽くす」。ITERを担当するフランス原子力庁のパスカル・ガラン博士は喜びを素直に表現した。

 カダラッシュは、同国南部プロバンス地方にある同庁の研究拠点。1959年の開設だ。

 官民合わせ約4100人が勤務し、原子力発電の安全性向上や廃棄物処理のほか、自然エネルギーや生命科学まで幅広い研究が行われている。

 核融合分野は80年代に、カダラッシュに集約された。核融合実験装置「トール・スープラ」(半径2・4メートル)はプラズマを6分間保持した記録をもつ。

 国際研究が日常化しており、ITER計画に携わるオランダ人のアッコ・マース博士は「教育も医療も高水準で、安心して暮らせる。日本からも多数の研究者が来るのを待っている」と話している。(増満浩志)

               

 〈核融合〉 重水素と三重水素を粒子ビームなどで1億度以上に加熱すると、それぞれの物質が原子核と電子に分離したプラズマ状態になって激しく動き回り、原子核の融合反応を起こす。燃料1グラムあたり石油8トン分という膨大なエネルギーが得られる。ヘリウムと中性子も発生するが、原子炉と異なり、核兵器に転用できるプルトニウムや、処理が厄介な高レベル放射性廃棄物は出ない。

  

 図=ITERの構造図

 図=核融合反応

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