本文です

大病院が外来を分離して「門前診療所」「患者囲い込みだ」日医が反発、火種にとは

 大規模病院が運営効率を高める目的で外来部門を切り離し、近くに「門前診療所」と呼ばれる外来患者専用の診療所を設置するケースが増えている。設置に法的な問題はないが、日本医師会は「地域の開業医を圧迫する」と批判的で、医師不足名義貸し問題に揺れる地域医療の現場で新たな火種となりつつある。

 「門前診療所」に関する公的調査はないが、日本医療機能評価機構の評価委員長として病院の審査に携わっている大道久・日大医学部教授(医療管理学)は「過去に審査した約千百の病院のうち、数十か所は外来用の診療所を作っていた。ここ数年、特に増加している」と話す。

 こうした形態の先駆けとされるのは千葉県鴨川市の亀田総合病院の取り組み。先進的な救急医療で知られる同病院は一九九五年、外来専門のクリニックを隣接地に作った。亀田省吾・クリニック院長は「病院の医師の意識は入院患者優先になりがち。外来に特化した施設で質の向上を目指した」と言う。一日あたりの患者は二千五百人と、分離前から千人以上も増えた。全国的にも注目を浴び、成功を知った各地の病院に広がっていった。

 「入院患者が外来患者の一・五倍以上になれば診療報酬が加算される」という診療報酬制度の見直しもこうした動きに拍車を掛けた。事実上病院と一体の門前診療所であっても、病院本体の入院患者の比率が増えるため、「経営上のメリットを求めて診療所を作るところが次々に出てきた」と厚労省関係者は解説する。

 さらに過疎地の病院では医師不足対策にもなる。年間平均患者数に応じた配置医師数が定められている病院と違い、診療所にはその規定がなく、外来部門を切り離すことで、病院と診療所を合わせた全体で必要な医師数を減らすことが可能になるからだ。

 医療機関の新設や病床数変更などには都道府県の許可が必要とされている。同じ敷地内に診療所を建てて、事実上病院の増築になるような計画は認められないが、間に公道がはさまっていたり、徒歩で数分程度離れた場所に作ったりするのであれば、「はねつける理由はなく、行政的には認めざるを得ない」と関係者は話す。

 しかし、こうした傾向に、開業医の発言力が強い日本医師会(日医)では不満が高まっている。星北斗常任理事は「好ましい姿ではない。脱法行為に近い」と批判。「地域医療は開業医と大規模病院が連携するのが理想なのに、門前診療所は患者の囲い込みに使われている。診療報酬制度もつまみ食いしている」と手厳しい。日医の病院問題の検討委員会は近く、門前診療所について「望ましくない」と厚労省に対し見直しを求める方針だ。

 厚労省の置かれた立場は微妙だ。「門前診療所は、現行の医療制度を骨抜きにする。おかしい」という声は多く、ある幹部は「制度の見直しも必要になってくるだろう」と話している。だが、「地域の診療所に満足できない患者が病院を志向している以上、そのサービスを向上させている門前診療所を一概に悪いとは言えない」という見方もあり、対立の解決策は簡単には見つかりそうにもない。

 

 〈病院・診療所〉 医療法では、患者20人以上を入院させることができる施設を「病院」、入院設備を持たないか、19人まで入院できる施設を「診療所」と定義している。厚労省の調査によると、昨年10月末現在で病院は全国で9118か所、診療所は9万6184か所(歯科診療所を除く)ある。

共通のキーワードを含む商品
Supported by 楽天ウェブサービス


 YOMIURI ONLINE  直近2週間のYOMIURI ONLINE速報記事より