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マラソン女子代表選考で陸連苦渋高橋尚子選びたい、でも透明性重視とは

 ◆「高橋の連続金 夢みたが…」

 アテネ五輪のマラソン代表選考で十五日、二〇〇〇年シドニー五輪金メダリストの高橋尚子(31)(スカイネットアジア航空)が女子代表選手に選ばれなかった。二〇〇一年のベルリンマラソンで当時の世界最高記録をマークし、日本陸連の沢木啓祐強化委員長でさえ「五輪マラソンで女子が成し遂げていない連続金メダルを取るのは高橋という夢を我々は抱いていた」と認めながら、期待の星はなぜ選に漏れたのか――。〈本文記事1面〉

 最終選考会の名古屋国際マラソンが行われた十四日夜、ある日本陸連幹部は、「日本が狙うのは金メダルで、高橋は欠かせない。選考原案には高橋が入る」と語った。沢木強化委員長も選考後には、「高橋を何とか代表に入れられないかと、その段階では(原案も)作った。しかし、ひと晩考えようとなった」と、悩んだ胸の内を明かした。

 十五日朝、理事会に先立って行われた選考委員会でも、高橋を代表とする最初の原案についての議論に約一時間半の大半が費やされた。この中でも高橋を推す声は依然として強かったが、選考委の最終結論は、既に内定していた野口みずき(グローバリー)のほか、前日の名古屋で選考会最高タイムを出した土佐礼子(三井住友海上)と、強豪が集まった一月の大阪を制した坂本直子(天満屋)を選ぶというものだった。

 増田明美理事は、「関係者はみんな高橋さんを選びたがっていた。どうやったら選べるか考えていた」と語る。それを断念せざるを得なかった一因について、ある陸連幹部が明かしたのが、「会長の意向」だった。この日の理事会の冒頭、河野洋平・日本陸連会長は、こう語った。「誰でも納得できる結論を導き出したい」

 過去のマラソン代表選考で、陸連は実績を重んじてきた。一九九二年バルセロナ五輪の際は、選考会で好タイムを出した松野明美を落とし、前年の世界選手権で四位の有森裕子を選んだ。九六年のアトランタ五輪でも、選考会で最高の記録を出した鈴木博美が落選し、バルセロナ銀の有森を選出した。しかし、その度、不透明な選考方法への批判が、国民から沸き起こった。

 こうした混乱を避けたい会長の意向も受け、今回の選考では最終的に透明さを重視。陸連のマラソン選考規定は、「各選考会の日本人上位の中から、本大会(五輪)でメダル獲得か入賞が期待される競技者」とあいまいだが、昨年十一月の東京で終盤失速して外国人選手に次ぐ二位となり、記録も土佐、坂本両選手に及ばなかった高橋が、実績で選ばれることはなかった。この明確な選考案について、理事会と評議員会も、文句のつけようがなかった。

 「選考は苦渋の決断だった。困惑した結果であることを付け加えたい」。代表発表会見で、沢木強化委員長は語った。陸連は、クリアな選考という国民から求められていた大義を、ついに果たした。しかし、一番選びたい選手を選べないという犠牲を払ったショックも、同時に残る結果となった。

 ◆他の競技 競泳は一発勝負

 競泳は日本水泳連盟が明確な選考基準を公表。代表選考会は四月の日本選手権のみの一発選考。各種目ごとに細かく決められている高水準の「派遣標準記録」を突破し、二位までに入った選手は「自動的に選考する」としている。

 明確化のきっかけは、二〇〇〇年シドニー五輪代表にもれた千葉すずの行動。「選考基準が不明確」として、スポーツ仲裁裁判所CAS、本部=スイス・ローザンヌ)に申し立てた。CASはこれを棄却するが、一方で水連の情報開示も不十分だったと指摘した。

 レスリングはアテネ五輪から女子種目が採用されて注目度が高まり、選考試合を広く公開。女子の場合、昨年末の全日本選手権と今年二月のクイーンズカップの選考二大会で優勝すると自動的に代表に決定、優勝者が異なる場合はプレーオフの勝者を代表にすると事前に明示した。

 《過去の難航例》

 ●中山、瀬古を”挑発” 松野「私を選んで」

 ◇ソウル五輪(八八年)男子 有力選手が集まった福岡国際が事実上の選考レースと見られたが、瀬古利彦(エスビー食品)がその前の駅伝で故障して欠場。中山竹通(ダイエー)が「僕ならはってでも出る」と発言し、選考は日本中の注目を浴びた。福岡優勝の中山と二位の新宅雅也(エスビー食品)と、後のびわ湖毎日を制した瀬古が代表に選ばれた。

 ◇バルセロナ五輪(九二年)女子 九一年世界選手権四位の有森裕子(リクルート)と大阪国際二位の松野明美(ニコニコドー)が三人目の代表を争った。松野はテレビで「私を選んでください」と訴えたが落選。有森は五輪で銀メダルを獲得した。

 ◇アトランタ五輪(九六年)女子 北海道を制した有森、東京国際優勝の浅利純子(ダイハツ)、名古屋国際優勝の真木和(ワコール)の三人が選ばれた。大阪国際に出場した鈴木博美(リクルート)は、選考レースで最もいいタイムだったが、ドーレ(独)に次ぐ二位だったため漏れた。有森が銅メダルを獲得。

 ◇シドニー五輪(二〇〇〇年)女子 九九年世界選手権二位の市橋有里(住友VISA)が早々と内定。それぞれ2時間22分台の好タイムを出した東京国際優勝の山口衛里(天満屋)、大阪国際二位の弘山晴美(資生堂)、名古屋国際優勝の高橋尚子(積水化学)三人が二枠を争い、弘山が落選した。五輪では高橋が金メダルを獲得した。所属は当時)

 

 〈マラソン代表選考委員会〉日本陸連の小掛照二、帖佐寛章両副会長のほか、桜井孝次専務理事、沢木啓祐強化委員長を含む、強化担当者10人で構成。五輪代表選考会の結果を審議して、たたき台となる原案を作成し、理事会に提出する役割を担う。

 

 〈日本陸連のアテネ五輪マラソン代表選考基準〉〈1〉第9回世界陸上選手権でメダルを獲得した競技者の中で、男女マラソンそれぞれの日本人最上位1名〈2〉上記以外は、各選考競技会(女子は東京国際、大阪国際、名古屋国際)の日本人上位の競技者の中から本大会でメダル獲得または入賞が期待される競技者

 

 写真=男女マラソン五輪代表を発表する沢木啓祐日本陸連理事・強化委員長(左端)=15日午後、東京・渋谷区で

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