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[教育ルネサンス]「平和」の今(5)松代大本営、生徒がガイド(連載)とは◇No.582 地域の歴史を掘り起こすことで平和を学ぶ高校生たちがいる。 長野市松代町は、白壁に黒瓦の武家屋敷が並ぶ、のどかな城下町だ。そのはずれの小高い山に、ぱっくりと開いた横穴が闇をのぞかせている。第2次大戦末期、本土決戦のため、日本軍が極秘に工事を進めていた松代大本営地下壕(ごう)だ。 「壕を掘るのに7000人の朝鮮人と3000人の日本人が働いていたとされ、つらい仕事は朝鮮人に任されていました」 今月9日、壕の中で私立長野俊英高校郷土研究班の生徒が説明を始めると、見学者は伏し目がちになった。修学旅行の行き先を決めるため視察に来た韓国の教師約20人の一行だった。 生徒たちは壕内を案内しながら、過酷な労働や悲惨な事故を語りながら、労働者が銭湯や酒屋に通い、学徒動員の旧制中学生らと交流を深めたことなど、郷土研究班が聞き取り調査で発掘してきた話を披露した。 「僕たちは一つの意見を押しつけるつもりはありません。ただ、戦争を考えるきっかけになれば」。生徒が締めくくると、見学者から大きな拍手が送られた。 ◎ 戦後放置されていた松代大本営地下壕を”再発見”したのも同校(当時は篠ノ井旭高校)の生徒だ。1985年、修学旅行で訪れた沖縄で、野戦病院として使われ、人の骨片や自決用の青酸カリのビンが残る地下壕に衝撃を受けたグループが、身近な大本営地下壕に関心を持った。 市に保存と公開を働きかけ、翌年にはその活動を引き継いで、郷土研究班が結成された。工事体験者らへの聞き取り調査も始め、これまでに120人以上に話を聞いた。現在の班員は13人。成果を壕内の案内で披露するほか、周辺の清掃活動にも取り組んでいる。 猪熊啓司校長(65)は「最初は不審そうだった地元の人たちも、こつこつと事実を知ろうとする生徒たちの姿勢を理解し、今は協力してくれる。継続に意味がある」と胸を張る。 ◎ 「工事で、日本人も立ち退きを命じられたり、亡くなったりしている。歴史を多面的に見て、一人一人が平和について考えることが大事だ」と3年生の滝沢一紀君。 班の設立以来、顧問を務める土屋光男教頭(58)は、今年4月、壕の入り口近くに、班活動の拠点となる小さな資料館を私費で開いた。活動の蓄積を班員以外の生徒の学習にも役立てようと、3年前から学校設定の選択科目「地域史」の授業にも取り組む。 松代大本営の歴史や郷土研究班の調査結果を学んだ上で、各自がテーマを決め、地元の歴史を調べて発表する。その延長で、就学前の子供たちを集めた戦時中の、他県の保育園疎開の史実を掘り起こした生徒もいる。「戦争反対を教条的に唱えても平和は守れない。他人を思いやり、地域を愛することが平和につながると考えています」 土屋教頭は、生徒たちがそれぞれの「平和」を掘り当てることを願っている。(松本由佳、写真も)
〈松代大本営地下壕〉 舞鶴山(まいづるやま)、皆神山(みなかみやま)、象山(ぞうざん)の三つの山中を碁盤の目のように掘り抜いた。総延長が10キロあり、大本営、政府各省など国の中枢を移す計画だった。東京から離れた内陸の盆地で地盤も硬いことが設営の理由とされる。1944年11月に着工、翌年8月15日の敗戦時には工程の75%まで進んでいた。90年から、象山の500メートル分のみが公開され、見学者はこれまでに170万人以上に上る。
写真=松代大本営の地下壕で韓国の教師に説明する郷土研究班の3年生、竹村亮祐君(右端)
2007年5月19日(Sat)
全国 朝刊
17頁(教育A) 04段 1416文字
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